心理学は現代では科学的な学問として確立されていますが、その起源はどこにあるのでしょうか?
本記事では、心理学の誕生から発展の過程を解説し、主要な理論や学派についても紹介します。
心理学の誕生前:哲学から科学へ
心理学が学問として確立する以前、人間の心の働きについての探求は哲学の一分野として行われていました。
古代ギリシャの哲学者たち
心理学のルーツは、紀元前の古代ギリシャにさかのぼります。
- ソクラテス(Socrates):自己認識と倫理的思考の重要性を強調。
- プラトン(Plato):心は肉体とは異なるものであり、理性・気概・欲望の3つの部分に分かれると考えた。
- アリストテレス(Aristotle):『霊魂論』において、心は物理的な体と不可分であると主張。
このように、古代哲学者たちは心や精神の本質について議論を重ねましたが、当時の心理学はまだ哲学の一部でした。
17〜19世紀:デカルトから生理学の発展へ
心理学が科学として発展するには、哲学から独立する必要がありました。
- ルネ・デカルト(René Descartes):心身二元論を提唱し、心と体は別の存在であると主張。
- ジョン・ロック(John Locke):「白紙の状態(タブラ・ラサ)」の概念を示し、人間の知識は経験によって形成されると説いた。
- ヴィルヘルム・ヴント(Wilhelm Wundt):実験心理学の父と呼ばれ、心理学を独立した学問へと発展させた。
こうした哲学や生理学の発展が、心理学の確立につながっていきました。
近代心理学の誕生
ヴントと実験心理学
心理学が正式に独立した学問とされるのは、1879年にヴントがライプツィヒ大学に心理学実験室を設立したことが契機とされています。
- 心理学を「意識の科学」として位置づける
- 内観法(introspection)を用いて、意識の構造を分析
- ヴントの影響で、心理学は客観的な実験によって研究されるようになった
心理学の主要な学派
ヴントの影響を受けつつも、さまざまな学派が生まれ、心理学は発展していきます。
1. 構成主義(Structuralism)
- ヴントの弟子、エドワード・T・itchener(Edward Titchener)が発展させた
- 心の構造を分解し、基本的要素を明らかにしようとする
2. 機能主義(Functionalism)
- ウィリアム・ジェームズ(William James)によって提唱
- 心の働きや適応を重視し、「意識の流れ(stream of consciousness)」という概念を導入
3. 行動主義(Behaviorism)
- ジョン・B・ワトソン(John B. Watson)やB.F.スキナー(B.F. Skinner)によって発展
- 心の内面ではなく、観察可能な行動に焦点を当てる
- 刺激と反応の関係を研究し、オペラント条件付けや古典的条件付けが確立された
4. ゲシュタルト心理学(Gestalt Psychology)
- マックス・ヴェルトハイマー(Max Wertheimer)らによって提唱
- 「全体は部分の総和以上である」という考え方を基に、知覚や認知を研究
5. 精神分析(Psychoanalysis)
- ジークムント・フロイト(Sigmund Freud)によって提唱
- 無意識の働きや、イド・自我・超自我の概念を導入
まとめ
心理学は哲学から生理学を経て、科学的な学問として発展しました。ヴントの実験心理学を皮切りに、行動主義、精神分析、認知心理学など、さまざまな学派が登場し、現在の心理学の基礎が築かれています。
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- 構成主義
- 機能主義
- 行動主義
- ゲシュタルト心理学
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