はじめに
「心理学人物シリーズ」では、心理学に登場する重要人物について解説します。
今回は、ロジャーズ!
ロジャーズは、「クライエント中心療法」が有名です。
覚えておきたいキーワードや著書とあわせて、ロジャーズの考え方を確認していきましょう。
ロジャーズ(Carl Rogers)とは?
カール・ロジャーズ(1902年〜1987年)は、アメリカの臨床心理学者で、人間性心理学の代表的な人物です。
精神分析や行動療法が主流だった時代に、「人間は本来成長しようとする力を持っている」と考え、クライエント自身が問題解決できるよう支えるアプローチを提案しました。
ロジャーズが提唱した「クライエント中心療法」とは
クライエント中心療法(Client-Centered Therapy)は、カウンセラーが特別な指導や助言を与えるのではなく、クライエント自身が自由に話し、内面を探求する過程を尊重する心理療法です。
この療法の核になるのが、カウンセラーが持つべき3つの基本態度です。
クライエント中心療法におけるカウンセラーの3つの基本態度
これらの態度を保ちながら関わることで、クライエントが自己理解を深め、自己成長を促進できると考えられています。
パーソナリティ変容の必要十分条件
ロジャーズは、クライエントが心理的に成長し、変容するために必要な6つの条件を提示しました。
6つの条件
- 2人の人が心理的な接触(psychological contact)を持っていること
→ カウンセラーとクライエントの間に心理的な関わりが成立している。 - 第1の人(クライエント)は不一致(incongruence)の状態にあり、傷つきやすく、不安な状態にあること
→ クライエントが自己概念と体験のズレに悩みを抱えている。 - 第2の人(セラピスト)は、その関係のなかで一致(congruence)しており、統合(integrated)していること
→ セラピストが誠実で、自己一致した態度を保っている。 - セラピストはクライエントに対して、無条件の積極的関心(unconditional positive regard)を経験していること
→ クライエントの存在を無条件に受け入れ、大切にしている。 - セラピストはクライエントの内的照合枠(internal frame of reference)を共感的に理解(empathic understanding)しており、この経験をクライエントに伝えようと努めていること
→ クライエントの世界観を尊重し、理解を伝える努力をしている。 - セラピストの共感的理解(empathic understanding)と無条件の積極的関心(unconditional positive regard)が最小限クライエントに伝わっていること
→ クライエントが「理解され、受け入れられている」と感じていることが重要。
この6つの条件のうち、特に次の3つは必ず押さえておきましょう。
クライエント中心療法の重要キーワード
ロジャーズの理論を理解するうえで欠かせないキーワードも確認しておきましょう。
評価の所在(Locus of Evaluation)
評価をカウンセラーが行うのではなく、クライエント自身が自分の体験や感情に価値を見出すこと。
自分の基準で物事を判断できるようになることが、自己成長には重要だと考えられています。
体験過程(Experiencing)
現在の体験に気づき、その流れを感じながら自己理解を深めるプロセス。
「今、ここ」の感覚を大切にして、感情や思考を丁寧に味わうことが重視されます。
自己概念と体験の一致(Congruence between Self-concept and Experience)
自分が「こうありたい」と思う自己イメージ(自己概念)と、実際の体験が一致することで、心理的な健康が保たれるという考え方。
この一致が崩れると、不安やストレスが生まれるため、カウンセリングでは一致を取り戻す支援が行われます。
十分に機能する人間(Fully Functioning Person)
ロジャーズが目指した理想の人間像。自分の体験に素直で、自由に成長し続けることができる人。
ロジャーズの覚えておきたい著書
ロジャーズの著書を覚えておくとよいものはこちらです。
- 『カウンセリングと心理療法(Counseling and Psychotherapy)』(1942年)
→ クライエント中心療法の基礎を築いた最初の本。従来の指示的アプローチから脱却し、非指示的カウンセリングを提唱。 - 『あるカウンセラーの成長(On Becoming a Person)』(1961年)
→ 自己成長のプロセスや、セラピストとしての在り方について語ったロジャーズの代表作。 - 『自由になるということ(Freedom to Learn)』(1969年)
→ 教育現場での人間性心理学の応用について書かれた一冊。
これらの本のタイトルや内容は試験対策として押さえておきましょう。
まとめ
カール・ロジャーズは、クライエント中心療法を通じて、心理支援の在り方を大きく変えた人物です。
試験でも頻出の理論なので、次のポイントをしっかり押さえておきましょう。
これらを理解しておけば、試験対策としても実践としても大きな力になります。
キーワード
- カール・ロジャーズ(Carl Rogers)
- クライエント中心療法(Client-Centered Therapy)
- 一致(Congruence)
- 無条件の積極的関心(Unconditional Positive Regard)
- 共感的理解(Empathic Understanding)
- パーソナリティ変容の必要十分条件
- 評価の所在(Locus of Evaluation)
- 体験過程(Experiencing)
- 自己概念と体験の一致(Congruence between Self-concept and Experience)
- 十分に機能する人間(Fully Functioning Person)
- 『カウンセリングと心理療法』
- 『あるカウンセラーの成長』
- 『自由になるということ』
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